主宰役員規制の除外要件緩和。法人成りへの影響は?
平成18年度税制改正で導入された「業務主宰役員の役員給与の損金不算入」制度は、税金逃れを目的とした「法人成り」を防ぐための制度だと言われています。法人成りとは、個人事業主が営む事業を法人化することをいいます。
確かに法人には個人事業より節税に有利な側面があります。たとえば、法人の場合は経営者の給与が必要経費にできるため、オーナー(社長)の給与をうまく制御すれば、支払うべき法人税や所得税の額を安くできることが多いのです。
もちろん、事業上の必要性や成長のためというような目的で法人成りする場合もあります。しかし、従来の法人成にはこのような節税目的が多かったのも事実です。ただ、会社法施行以前は最低資本金(株式会社1千万円)の規定があったため、それが法人成りについての一種の防波堤になっていました。
しかし、会社法施行によりこの防波堤(最低資本金)が無くなりました。国税当局は、そうなると個人事業主は「節税」目的でどんどん法人化するのではと恐れたのでしょう。新たな防波堤として、一定の要件の元に社長の給与所得控除相当額を損金算入できなくする「業務主宰役員の役員給与の損金不算入」制度を持ち出してきました。
ところが、防波堤として用意されたはずの同制度は、結果として多くの既存の中小企業にとって「増税」となる結果になりました。当初の財務省試算よりもはるかに多くの中小企業が同制度の対象となったのです。そこで、平成19年度税制改正では同制度の除外要件が大幅に緩和されることになりました。できたばかりの制度が翌年に見直されるのは異例のことです。
同制度の除外要件が緩和されたことにより、事業の儲けが1600万円未満の事業の場合、法人成りしても同制度の対象となるリスクが減少します。そうなると、従来通りの節税効果が期待できるケースが増えてきますので、法人成りを検討する企業が増加することが予想されます。
ちなみに、法人成りには以下のようなメリットとデメリットがあると言われています。
■メリット
・税金の計算上、法人税の方が所得税よりも税率的に有利
・以下の経費を必要経費にできる。
経営者に対する一定の役員給与、経営者の家族への給与(届出不要)、経営者や同一生計内の親族に対する退職金や不動産賃料、経営経営者を被保険者とした一定の生命保険料など
・法人化後、2年間は消費税が免税になる。
また、法人化することによって会社の信用力は高まりますし、金融機関からの融資も多少受けやすくなります。■デメリット
@事業が赤字でも法人事業税を支払わなければならない。
A必要経費にできる交際費に限度がある。
B従業員が5名未満でも社会保険の加入義務がある。
一般的に事業の維持経費は法人の方が多少多くなります。また、記帳や給与計算などの事務量が増えるため、個人で事業を行っている人には大きな負担になるケースもあります。
法人成りを検討する場合は、これらのメリットとデメリットを総合的に試算、判断して実施する必要があります。
更新2007年4月26